先代のPHVでの経験を踏まえ、
ベースのハイブリッドより
1クラス上と明確にわかる性能を備えたのが、
今度の新型プリウスPHVである。
動力性能、EV航続距離、充電手段など、
全てが高次元に進化した。
こちらの記事に書かれている内容は・・・
◆大幅に改良されたEV性能

新しくなった新型プリウスPHVは
従来比で約2倍の容量となった
駆動用バッテリーや
パワフルな走りを生み出す
デュアルモータードライブシステム
をはじめ、
使いやすくなった充電システム
や世界初のソーラーバッテリー
充電などにより、
あらゆるシチュエーションでの
使い勝手が大きく進化している。
まず、
PHVを構成するパーツを
おさらいしてみよう。
エンジンは現行プリウスと同じだが、
トランスアクスルに変更が加えられ、
ジェネレーターが
モーターとしても作動するようになった。
トランスアクスル上に
セットされるパワーコントロール
ユニットの性能も
1.8倍に引き上げられている。
駆動用バッテリーは
リヤのラゲッジ下にあり、
これは先代PHVと同様の位置。
さすがにリヤシート下には
収まらなかった。
充電ポートは、
急速充電用とAC充電用を備え、
AC充電用は
AC200V/16Aと
AC100V/6Aに対応する。
AC100Vは充電電波が
従来の12Aから6Aとなったことで、
専用回線の工事が不要となり、
充電設備にかかるコストを
下げることができる。
ソーラー充電システムは、
クルマ自身で電気をまかなうという、
画期的なもので
駐車中に駆動用バッテリーが
充電できる。
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◆ジェネレーターが駆動も行う

バッテリー容量の大幅アップで、
EV走行での航続距離が約2倍と
なった新型プリウスPHVは、
動力性能でも大きな進化を
果たしている。
現行プリウスではレイアウトが
一新された平行軸型の
トランスアスクルが話題となったが、
PHV用として
ジェネレーターも駆動用モーター
として作動する、
デュアルモータードライブ
へと進化したのだ。
標準のハイブリッドの
トランスアクスルの動力源は
1NMという型式の
モーターで、
最高出力53KW(72ps)、
最大トルク163NM(16.6kgm)
を発揮し、
状況に応じてモーターのみと
エンジンの駆動力も合わせた
走行を行う。
今回のPHV用では
ジェネレーターがモーターと
なっており、
1SMという型式名がついている。
こちらは
最高出力23KW(31ps)、
最大トルク40NMを生み出す。
EVでの通常走行時は
1NMモーターで走行するが、
大きな出力が必要となった時は、
1SMジェネレーターが
ブースター的に駆動して
パワフルな走りを提供する。
これを実現するためには、
トランスアクスルの改造が
必要になった。
1SMジェネレーターは
エンジンや駆動輪側と動力分割機構を
介してつながっている。
動力分割機構は
プラネタリーギヤを用いたものだが、
EV走行時のデュアルモータードライブ時に、
ジェネレーターがモーターと
なって回転すると駆動の反力で
エンジンが逆転してしまうのだ。
これでは推進力とはならないので、
エンジンに逆転防止機構を追加している。
これが、
エンジンのフライホイールに設けられた
ワンウェイクラッチで、
刻みの付けられた固定リングの
外周をボールと呼ばれる
爪付きのクラッチが回転するもので
エンジン回転中はボールが遠心力
で押し込まれた状態になっており、
停止中はスプリングで
固定リングに押し付けられて
1SMジェネレーターが
駆動された時には
逆転を防ぐようになっている。
なお後退時は、
1NMモーターのみの使用となる。
デュアルモータードライブの採用で、
信頼性や耐久性の強化も行っている。
PHVではエンジン停止時間が
ハイブリッドより長いので、
外付けの電動オイルポンプを
追加してEV時にトランスアクスルオイルを
循環させるようにしている。
これはトランスアクスル内の
オイルポンプがエンジンと連動しているためだ。
また、
動力分割機構の
プラネタリーギヤも、
デュアルモータードライブにより、
ギヤへの負担が増加しているので、
インプットシャフトの変更を
行って潤滑方式を変更している。
・エンジンの逆転防止にワンウェイクラッチを追加
エンジンのフライホイールに
ワンウェイクラッチが追加され、
MG①駆動時に起こる
エンジンの逆転を防止する。
エンジンとトランスアクスルの
間に黒い固定プレートに
刻みを設けた内輪が止められおり、
エンジンが停止すると
ボールが刻みに噛むようになっている。
エンジン作動時はボールが
遠心力で内輪から離れるので
引き摺りや作動音の発生がない。
・トランスアクスル構造とデュアルモータードライブの機能
デュアルモータードライブのの作動状況。
通常走行では従来同様に
駆動用モーターMG2のみで走行する。
加速や登板時などに大きな駆動が
必要になった時は、
MG2+MG①の2つのモーターで駆動する。
力強いEV加速性能を実現し、
EV最高速度も135㎞/hへアップ。
◆旧PHV比で約2倍の容量でEV走行

旧プリウスPHVでは、
一般的な通勤で必要とされる距離を
リサーチしてフル充電での
EV走行距離を26.4kmとしていたが、
ハイブリッド自体の燃料性能が
優れていたこともあり、
重量と超すとが増加するPHVの
メリットが十分訴求できなかった。
そこで新型ではEV走行距離を
60㎞超へと大幅にアップし、
PHVならではの価値を十分に高めている。
その中核となるのが
駆動用バッテリーで、
総電力量は従来の4.4KWhから
8.8KWhへと約2倍に大幅増強している。
そのぶん、
バッテリーの質量と体積は
増えてしまうが、
質量は従来の80kgから120kgで
約1.5倍、
体積は同87Lから145Lで
約1.6倍
にとどめている。
リチウムイオンバッテリーの
セル自体も改良され、
セル単体のサイズは
同様ながら従来の21.5Ahから
25Ahへと約2割向上。
セル個数は56個から95個へ増やし、
総電圧も207.2Vから
351.5Vへと増大させている。
搭載バッテリーが増大した分、
メインリレーなどの
高電圧制御回路のレイアウトも
変更されており、
従来はバッテリー前方に配置
されていたものを、
新型ではバッテリー上部に
移設している。
バッテリー冷却は
従来通り空冷式で、
キャビン側から空気を取り入れて、
後方へ排出する経路になっている。
また、
リチウムイオンバッテリー
の性能をフルに生かすために、
バッテリー昇温システムが新採用された。
氷点下以下になる環境下では、
バッテリーの充電容量が十分に残っていても、
性能低下が起こるので
モーターだけでは十分な
駆動が発揮できなくなる。
そうするとエンジンが作動して
走行に必要な出力を生み出さなくては
ならなくなり、
燃費が悪化してしまう。
この寒冷時対策として
採用されたのが電動ヒーターである。
ヒーターは5つのバッテリー
モジュールの下にそれぞれあり、
シートヒーターに使われる
電線をS字型に這わせてある。
動作は12V系で行い能力は130W。
万一のヒーター制御異常時にも
バッテリーの過熱を起こす
といった不具合は起こさない
熱量となっていて、
安全性も充分配慮されている。
ヒーターが作動するのは、
氷点下以下の環境で、
バッテリーが常温域を保てる
ように制御される。
またブラグインでの充電時も
タイマーで設定した走行開始予定時刻に
目標温度になるように
自動でヒーターを作動させる
ことが可能。
この時は、
前もってヒーターが作動し、
バッテリー温度を常温域にしてから
充電をスタートさせる。
これによって冬期でも充分な
EV走行を確保できるように
工夫されているのである。
・新旧駆動用バッテリーの違い
新旧プリウスPHVはどちらも
リチウムイオンバッテリー
を採用しているが、
新型ではセル自体の容量が
アップしている。
さらにセル個数も約1.7倍に
することで、
総電力量を約2倍に増やしている。
これがEV走行性能の大幅アップ
の原動力となる。
・バッテリー昇温システムを採用
リチウムイオンバッテリーは
低温時の性能低下が大きくなる。
とくに氷点下になると
顕著になるために、
バッテリー昇温システムを追加した。
シートヒーターと同素材のもので
バッテリーモジュールの下から
暖める。
タイマー充電とも連携し、
低温時は走行開始予定時刻
から逆算して先にヒーターが作動し、
その後充電が始まる。
・エンジン以外の電気系はほとんど刷新
エンジンのスペックは
ハイブリッドと同様だが、
ハイブリッドトランスアクスル、
パワーコントロールユニット、
駆動用バッテリーが専用品となっている。
充電方式でも、
旧プリウスPHVより
AC100V-6Aになったことなどで
使い勝手を向上させている。
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◆100Vの6A充電にも対応し使いやすく

プラグイン用の充電ポートは
リヤ右サイドに設けてアリ、
普通充電と急速充電のふたつのポートがある。
普通充電はAC200VおよびAC100Vに対応する。
電流は、
AC200Vは16Aで、
住宅または公共の普通充電スタンドにて
最大3.0KWで充電可能。
充電出力は従来比約1.5倍となっていて、
充電時間は約2時間20分(満充電)。
AC100Vは6Aで満充電には14時間
必要だが、
コンセントの専用回路工事が
不要なのがポイントだ。
PHV車導入のために
専用回路の工事を新規に行うと
10万円程度必要になるが、
一般回路で充電が可能となるので、
壁コンセントから直接充電ができる。
ただし、
屋外コンセントは従来型では
抜け止め機構の繰り返し使用
回数が100回程度と少なく、
専用コンセントが設定されている。
100V/6Aの満充電時間は確かに長いが、
近距離がメインで1回の
EV走行が60㎞に満たず、
こまめかつ長時間の充電が苦に
ならない用途なら、
充電器の導入コストが省けることになる。
通勤用途なら200V/16Aが望ましい。
また、
充電ポートのリッド部、
およびコネクター部はスマートキー
連動の
『スマートリッド&コネクターリッドロックシステム』
を採用し、
充電コネクターの施錠を用意にし、
盗難やいたずらを防げるようにした。
・スマートリッド&コネクターシステム
スマートキー連動の
スマートリッド&コネクターシステムを採用。
検知エリア内にメインキーを
持ち込んだ状態で、
リッドのボタンを押すと
ロック/アンロックが可能。
その他にも
用途に合わせたオートロック、
アンオートロックが可能だ。
・外部電源供給も可能
ヴィークルパワーコネクター
による100Vの外部電源
供給システムは従来と同様に使用可能。
パワースイッチを2回押して
システムをONにして使用。
車内のコンセントと合わせ
総合1500Wの電力を供給する。
◆量産車世界初のソーラー充電システム

新型プリウスPHVの完成度や
実用性はかなり高いものとなっているが、
さらにEVとしての可能性を
引き出す世界初のシステムも
用意されている。
それが、
ソーラー充電システムである。
旧30系でもルーフに
ソーラーパネルを搭載した
モデルがあったが、
それはキャビンの換気用であった。
新型ではそのような
アクセサリー的なものではなく、
駆動用バッテリーへの
充電を実現したのだ。
夏場など日照が良い条件なら、
1日で最大6.1KW分の充電を行うことができ、
平均でも2.9㎞/日の走行ができる。
このシステムの主要パーツは、
ソーラーパネル、
ソーラーバッテリー、
ソーラーECUとなっており、
ルーフガラス一体とされた
ソーラーパネルはパナソニック製である。
ソーラーパネルは1か所でも
日光の当たらない部分が
できると発電しなくなるが、
パネルを7ブロックに分けて
バイパス回路を設ける事で、
一部のセルに影ができても
発電を継続できるようになっている。
停車中はソーラーパネルから
ソーラーバッテリーを充電し、
バッテリーに電気が溜まったら、
昇圧して駆動用バッテリーを充電。
これは平均すると1日に10回程度
行われる。
走行中は12V系の電力を補給することで、
駆動用バッテリーの電力消費を
抑える働きを行っている。
・ソーラーパネルに一旦ため込む
ソーラーパネルから
駆動用バッテリーへ直接充電
しようとしても、
駆動用バッテリーの作動
状態では多くの電装品が
作動するために、
せんあくの電力が帳消しに
なってしまう。
そこで、
小電力で働くソーラー
ECUからバッテリーを充電し、
溜まったら昇圧して一気に
駆動用バッテリーに送るという
方式で高効率化を図っている。