新型タント N-BOXとの比較では、一部勝るもトータルでは勝てない?

20190703-20105337-carview-000-3-view

ついに登場した新型のタント。新型タントはN-BOXを超えたのかもしれない。なんせ2003年生まれのタントは長らく軽スーパーハイトワゴンの王座に君臨。最強のライバルであるスズキが競合パレットを出しても手も足もでなかった。なぜならタントが初代で打ち出した全高1.7m台の常識破りの背高ボディに、開口部が異様に広い助手席側ピラーレス構造が圧倒的人気に。あのときのタントは日本の軽自動車を変えたと言えるだろう。

ところが2011年デビューの伏兵ホンダのN-BOXが奇跡の大逆転を図る。同じスーパーハイトとして外寸はほぼ同じだがタントを上回る室内長と圧倒的質感、圧倒的な走りのよさでタントどころか、かつての軽乗用の頂点であるワゴンRをも抜き去り、軽乗用車の銘柄別販売ナンバーワンに輝いた。

それどころか以降ずっと軽のトップをキープするのはもちろん、2018年に登場した2代目N-BOXは登録車よりも売れ今や「日本の国民車」となったのだ。

スポンサーリンク

◆新型タントの進化度が凄いという

20190703-20105337-carview-005-3-view

N-BOXを一部超えたのか?と思われるほどボディ全体の剛性感としっとり感を備えている。4代目は新世代プラットフォームの「DNGA」を初採用。エンジンから革新的CVTからシャシーまで一気に刷新しただけではない。この世代から軽のみならず、コンパクトのA&Bセグメントで共通のものづくり思想を採用してきた。圧倒的合理化を達成し、安い軽でも高い剛性、走行性能をリーズナブルに実現できている。

ここは確実に効いていて、乗り心地もしっかり感としっとり感はズバリ登録車なみ。同時に電動化を含むCASEや新モビリティーのMaaSにも対応。プラットフォーム的にもモーター搭載はもちろん、親会社のトヨタのTHS搭載まで想定し、取り急ぎ新型タントは現行先進安全機能のスマートアシストⅢの単眼カメラとミリ波レーダーを使いつつ自動運転性能をアップさせた。

拘束で車線中央をきちんとトレースできるうえ、渋滞事は追従オートクルーズでの完全停止も実現。再発進に独特な手間もかかるが、半自動運転性能でもホンダセンシングを一部超えている。ホンダ流は完全停止はもちろん車線中央キープもできないのだ。加速性能に関してはターボ、ノンターボともN-BOXと同等と察する。それでいてエネルギー伝達効率のいいスプリットモード付CVTがゆえ燃費はいい。

一方少し拍子抜けなのがデザインとインテリアで外観はすっきりしたとはいえN-BOXのボクシー感はないし、インパネもよくなったとはいえチープ感がある。全体的に見ると買い換えたいと思えないところもある。

スポンサーリンク

◆新型タントは大幅グレードアップ

20190703-20105337-carview-012-3-view

6年ぶりにモデルチェンジした4代目タントは、パワートレイン、プラットフォームに新しいアークテクチャを導入した点に注目だろう。トヨタにならってDNGAと名乗るこのアーキテクチャは、軽のみならず、A、Bセグメントまでカバーする技術プラットフォーム。ダイハツがグローバルで担当する車種すべてをこれでカバーするワケで、まさに社運をかけた渾身作と言える。

まずエンジンについては、NAもターボも第一印象は上々だろう。レスポンス、パワー感、そして吹ケ上がりのスムーズさ、どれをとっても優等生と言える。NAですらさしたる不満もなくスイスイと走ってくれる。スペックについては、デュアルインジェクター化や集合エキゾーストなど、最新トレンドを取り入れながらきめ細かい改良を実施している。まるで乾いたぞうきんを絞るように、モデルチェンジのためにに少しずつ性能を向上させてくることに感心するのである。

この新エンジンに加えて、新しいアイディアを盛り込んだ新型CVTがタントのドライバビリティをグレードアップしているのだ。ダイハツがデュアルモードCVTと名付けたこのCVTは遊星ギアを使ってトルクをふたつのルートでタイヤに伝達するユニークなメカニズム。変速比幅の拡大とベルトの負荷低減の一石二鳥で、ドライバビリティと燃費をともに向上させている。

このCVTの優れた特性が、新型タントのドライバビリティに大きく貢献している。激戦区の軽自動車でライバルからぬきんでるのは難しいが、この新型エンジンと新型CVTのコンビネーションはアタマ一つ抜けた印象だ。ぜひ試乗してもらいたいところだ。

タントはモアハイト系ワゴンの元祖だが、1.75mという高い全高によって操縦安定性とのバランスを取ることに苦労してきた。このテーマに新型は80kgの軽量化と思い切ったシャシー性能のグレードアップで対処している。DNGAはA、Bセグメントまでを視野に入れたアーキテクチャーなので、サスペンションにもそれなりの対応が必須となる。シャシー剛性の強化をはじめ、足回り部品ひとつのグレードに至るまで、従来モデルより一歩踏み込んだ作り込みが感じられるのだ。

重心高が高く決してサーキット向きとはいえないクルマながら、VCSがガンガン作動するような状況でも全然不安がない。タイヤのグリップ限界がそれほど高くないのでVSCは早めに介入するが、そこに至るインフォメーションやステア操作による回避余力は十分に合格点だろう。欲を言えば、ブラシレスモーターを奢り電動パワステの操舵フィールを改善したいところだが、コストの関係でそこまで手がまわらなかったようだ。

先進安全装備については、全車速ACCやレーンキープアシストなど、最新トレンドは一通り標準装備している。ここでもパーキングブレーキが踏み足式のため、停止維持ができないのが最後に加える大切な仕上げだろうが・・・。もう少しでこの分野のトップになれるのに、惜しいところだ。

スポンサーリンク

◆N-BOXの牙城を崩すか?

20190703-20105337-carview-035-3-view

タントは人気が高く、発売から5年以上を経た今でも販売台数はN-BOXと比べて総合3位。新型タントの内装は現行型より上質だが、ライバル2車を大きく上回るほどではない。特にN-BOXはメーター周辺の造りが丁寧で、タントと差がつきにくい。シートの座り心地は、現行タントでは後席が不満となる。座面の柔軟性が乏しく、床と座面の間隔も不足しており、足を前側に放り出す座り方になる。そこを新型では床と座面の間隔を16mm広げて着座姿勢を向上させ、柔軟性も増している。背もたれは腰を包む形状でサポート性はいい。

スペーシアのシートは少し硬いが、N-BOXは身体が適度に沈んで快適。タントの室内の快適性はスペーシアを少し上回り、N-BOXと同程度と感じる。前後席の頭上と足元の空間も、タントとN-BOXは互角。身長170cmの大人4名が乗車しても、後席に乗る乗員の膝先空間は、タントとN-BOXが握りコブシ4つぶん、スペーシアは3つ半になる。Lサイズセダンのクラウンがふたつ半なので、スペーシアを含めて十分に広いと言える。

使い勝手では、タントに装着された左側のスライドドアに特徴がある。現行型と同様、中央のピラーをスライドドアに内蔵させ、前後両方を開いた時名開口幅がワイドに広がる。乗降性がいい。動力性能は、ノーマルエンジンの場合、タントは実用回転域の駆動力が増した。CVTのギア比がワイド化され、エンジンは少し高回転思考でも加速は滑らかなのだ。現行型のパワー不足を解消している。ライバル車と比較しても、タントは比較的余裕があり、スペーシアは実用回転域の駆動力が少し足りないと感じる。N-BOXはパワフルではないが扱いやすい。

ターボはパワフルで、10.0kgm前後のトルクが幅広い回転域で持続される印象だ。1L前後のエンジンを搭載する感覚で運転可能でノイズも小さい。スペーシアのターボも動力性能は十分。アクセルペダルを踏み増した時のノイズは少し粗いが、吹ケ上がりが活発で加速はいいのだ。

走行安定性は現行タントでは操舵感が鈍い。高重心のボディで安定性を確保するためである。そこを新型はプラットフォーム、サスペンション、タイヤまで新開発して自然な印象にあらためた。操舵に対する反応も正確になっている。

例えば車線を変える場合、ボディの傾き方は小さくないが、挙動の変化が穏やかに進むから不安定になりにくい。カーブを曲がる時はボディの内側が持ち上がるというより、外側が沈む印象となる。唐突にふらりと傾く不安感も抑えてある。

スペーシアは少し安定指向で車両の動きは穏やかだが、そのぶんだけ後輪の接地性が高い。N-BOXは機敏ではないが、重厚感が伴い、4輪がしっかりと接地する。タントとは互角といえる。

なおターボのタントカスタムRSは、足回りが少し硬い。15インチタイヤと相まって操舵感は機敏なのだが、乗り心地は路上の凸凹を伝えやすい。14インチは快適である。装備では運転支援機能に注目したい。新型タントに車間距離を自動調整できるクルーズコントロールが用意され、デイズのプロパイロットと同じく全車速追従型になる。N-BOXは30km/h以下でキャンセルされ、スペーシアにはこのタイプのクルーズコントロールがないから、タントがリードすることに。LEDヘッドランプは、部分的に消灯して、ハイビームを保ちながら相手の眩惑を抑えることができる。

以上のように新型タントは、先代型の欠点を払拭さえ、居住性や走行性能はN-BOXに近い。決め手に欠ける印象もあるが、運転支援機能と安全装備は最も先進的と言える。開口幅のワイドな左側スライドドアも、依然として魅力なものとなっている。

スポンサーリンク
スポンサーリンク