高齢者が加害者になる交通事故が多発しているなかで、”高齢者の運転は危険だ”というヘイト発言だけでは、交通事故ゼロ社会を実現することはできないだろう。そこで、高齢者の運転を闇雲に排除するのではなく、今何ができるのか?そして技術革新によりどのような防止策が実現可能なのか、考えてみる。
◆高齢者事故を減らす対策

高齢者の事故が社会的な問題になっている。10年ほど前には日常の生活に支障をきたさないような軽度の認知症であっても、信号や一時停止の見落としとして、逆走など行うようになってくる。警察はそういった情報を持っているのだろう。数年前から高齢者に対する免許更新手続きの強化を始めている。とはいえ、高齢者問題は警察だけで解決できるような問題ではないと思われるのだ。
そもそも高齢者といっても個人差が極めて大きいだろう。75歳で武道の達人の人もいれば、杖をついてやっと歩ける人もいる。アクセルペダルからブレーキペダルの踏み替えに1秒かかる人すらいるのだ。
一方で、免許更新時のチェックは、視力と認知症検査のみ。身体能力の衰えについては何の検査もない。やはりクルマの運転は「心・技・体」が必要なのだろう。どこかのタイミングで対策が必要なのだ。
高齢者に対しては認知症のほかに、アクセルからブレーキの踏み替え時間を計測してみると、基準値に届かない人に対しては運転できる車両を安全装置付に限定してみたりしてはどうか?認知症も身体能力も最低基準を作っておき、合格できなければ危険性の伴う運転行為は無理だろう。ここは躊躇せずに更新不可にするのだ。普通、アクセルからブレーキの踏み替え時間は0.4秒程度。1秒以上かかるようだと運転は無理だろう。
安全装置については、今の技術でも最高速度を60km/hに制限しておくことにより「どんなミスをしても事故を起こさない車両」が作れる。具体的には、日産デイズのような高性能自動ブレーキ付クルマに60km/hの速度リミッターを付けたり、赤信号や一時停止標識での自動ブレーキ&ペダル踏み間違い防止機能を加えてみてもいいだろう。問題は基準を作ること。そうすれば事故のない未来ができるかもしれない。
◆制御不能のクルマは止められる!

福岡の暴走事故は助手席に座っていた女性がシートベルトをはずしてクルマを止めようとしたようだ。確かに助手席から暴走した車を安全に止められればなお良い。古いクルマならばセレクトレバーをニュートラルにしてサイドブレーキを引っ張ることで減速ができる。
だが、昨今の電子式ATだとニュートラルにするのに知識が必要な上、足踏み式のサイドブレーキだといかんともしがたいところがある。そんな中、緊急停止機能がついている電動パーキングブレーキのクルマも増えている。
例えばXC90以降のボルボ。アクセル全開で加速中であっても、サイドブレーキスイッチを引き続けることによりアクセルオフとなり、同時に後輪のブレーキが強くかかる。姿勢を崩すことなく短い距離で安定して停止できるのだ。同じような機能はスバル、日産の新世代電動パーキングブレーキ付車両でもできる。同じようにアクセルを戻してブレーキをかけて停止するようになっているのだ。
ホンダの場合、取り扱い説明書に緊急ブレーキとしての記載がなく、開発部門としては存在を認めないが、ボルトやスバルなどと同じく「アクセルを戻して急ブレーキ」という制御になっている。逆に原稿アルファードだと取り扱い説明書には緊急ブレーキとして紹介されているのだが、アクセル全開だとエンジンは吹けたままのため事実上止まれない。マツダや三菱自動車についてはどうだろうか。
◆各メーカーのペダル踏み間違い防止機能

・トヨタ
踏み間違い時サポートブレーキ/ドライブスタートコントロール
踏み間違い時サポートブレーキは前後に4つ、計8個のソナーで障害物を検知。前進・後進時にブレーキとアクセルを踏み間違えた場合、自動ブレーキが作動する。
ドライブスタートコントロールはアクセルを踏み込んだまま、シフトをRからDレンジに変更した場合、メーター内のディスプレイで警告表示する。さらに急発進、急加速をさせないようにエンジン出力を抑制して、衝突時の被害軽減を行う。
・日産
踏み間違い衝突防止アシスト
駐車時や低速倉庫時(0~15km/h)、進行方向に障害物がある場合にブレーキと間違ってアクセルを踏み込んでしまった場合や、ブレーキ操作が遅れてしまった時にシステムが自動的に加速を抑制、ブレーキをかけることで衝突防止をアシストする。
・ホンダ
誤発進抑制機能
停車時や10km/h以下の低速走行時、ミリ波レーダーが前方の障害物を検知してドライバーがアクセルペダルを踏み込んだ場合の急加速を抑制して、音とディスプレイ表示で警告をする。リアクティブフォースペダル装着車はさらにアクセルペダルの振動で警告をする。
・マツダ
AT誤発進制御
停車時、赤外線レーダーが前方の障害物を検知した状態でアクセルが一定以上踏み込まれた場合に作動する。警告音とメーター内ディスプレイ表示によってドライバーへの注意を促し、同時にエンジン出力を自動で制御して急発進を抑制する。
・三菱
踏み間違い衝突防止アシスト
前後バンパーに搭載した4つのソナーが、進行方向に車両や歩行者、壁などの障害物を検知している状態で、ブレーキとアクセルの踏み間違いなどの操作ミスによってブレーキ操作が遅れた場合、ドライバーにブザー音とメーター内のディスプレイ表示で警告。さらにエンジン出力やブレーキを作動することで、過度な加速を抑制して衝突被害を軽減する。
・スバル
AT誤発進抑制制御/AT誤後進抑制制御
壁や生け垣など、前方に障害物が検知され、誤発進としたシステムが判断した場合、警告音と警告表示で注意を喚起する。同時にエンジン出力を抑え、発進を穏やかにする。アイサイトversion3では、発進のほか後進へも対応する。
・スズキ
ペダル踏み間違い時加速抑制装置
ステレオカメラ、赤外線レーザー、超音波センサーが前方の障害物を検知した状態で、停車中または徐行中の急なアクセル操作に対して、ブザー音とディスプレイの点滅により注意を促し、同時にエンジン出力を自動的に最長5秒間抑制する。ペダルやシフト操作ミスによる衝突の回避に貢献する。
・ダイハツ
誤発進抑制制御機能
車速が約10km/h以下で、前方約4m以内、後方約2~3m先まで障害物があり、ステレオカメラが検知してる状況でブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏み込んだ場合、ブザー音とメーター内表示で警告、同時に急発進を抑制する。