カムリ 新型 WSと新型インサイト 比べてみるとカムリがやっぱりいいと思う。

国産ミッドサイズ4ドアサルーンは世界に通用する実力があるのだろうか?国産ミッドサイズセダンを代表するカムリとインサイトを比べてみたいと思うのです。カムリはすでにデビューから2年近く経過しており、先代型のイン里はプリウスに対抗する存在とした5ドアハッチでしたが、今回のモデルは正統派4ドアセダンとして開発してきました。

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◆カムリとインサイト デザインの差は?

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カムリのホイールデザインはかなり目につく仕様になっています。俊敏なスポーツモデルを表現したデザインとは言いがたいものでしょう。デザインの処理からはRVを強調するデザインのようです。狙いな一体どこにあるのでしょうか?

メインのスポークに際立った補助リブを追加しているのですが、これは一般的にはSUVやクロスカントリーモデルでどっぷりとした力強さや重厚感を表現するデザイン手法で、スポーティセダンの軽快さや俊敏さの表現ができているとは思えないものなのです。デザインというのは単なる目先の形作りではなく、そのクルマのウリやコンセプトなどを伝えるための手段として表現する役割があります。

しかし一般的に個々の部品を担当するデザイナーは、どうしても部品単体の中で他車との差別感を出すことに執着してしまうのです。だからこそしっかりとしたテーマを与えて個々の構成部品がどんな表現を受け持つかを明確にすることが大切なのです。このテーマのずれたホイールデザインが、せっかくの洗練された走りのイメージを壊している感じがします。もったいないということです。

インサイトはホイールデザインは何を表現しているのか?と思わせます。ハイブリッドで燃費がいい、空力が優れているという、風のながれをイメージさせているのでしょう。このホイールのデザインでは操縦安定性のレスポンスや乗り心地で重要なホイールの軽量化は難しいと思われます。なぜなら、この渦巻きのようなスポーク形状では、瞬時にどんと入る縦方向の入力に対して剛性を確保するためには、スポーク内部の肉厚を上げる必要があり、軽量化が難しくなってくるからです。

さらに、これは空力を優先したデザインということであれば、それよりまず先にやるべきことがあるのです。ホイール面とフェンダーオープニングの大きな段差をなくしたり、隙間を減らすことからやるべきなのです。特にホイールオープニング部の隙間には、こんなに大きく開いていると走行中に風が入り込んでリフトや抵抗の発生要因ともなります。しかもホイールのデザインはほとんど空力性能には関係しないのです。

ただ、フロントバンパー前面からサイドにかけての面は上手に作れていると思われます。ここの風の流れはスムーズです。でも、せっかくここはうまく作れているのにフロントフェンダーから後がもったいない。とまっているクルマに風を当てるだけの実車風洞で実験するといい結果が出ていることだろう。しかし、実際の走行中のクルマと同じく、地面が動いてタイヤも回る、ムービングベルトタイプの風洞で実験をすると、フロントフェンダー後方に巨大な渦が発生していたり、フェンダー内部に風が巻き込みリフトや抵抗を発生している様子がわかることだろう。

フロントマスクはカムリもインサイトもグリルとバンパー面に大きな段差があり、これは渦の発生源となり、空力的にはあまりよくありません。もっとも、いいか悪いかは別にして、カムリは「このトヨタ顔」に決めたのでしょうから、それはいいと思われます。しかしベンツもBMWもフロントマスクにへんな段差などは付けていないのです。

また、ワイパーを見たとき、今時この車格で、このインサイトのように大きく曲げて湾曲したワイパーアームがむきだしのクルマはないでしょう。フラットな形状のフード後端から来る強い風が、大きく湾曲して露出したワイパーアームに当たるので、大きな渦ができてしまいます。ここはしっかりとアームをフードの中に隠すか、あるいはフード後端にアプローチの傾斜を付けることでフード後端の位置を上げて、素直にフロントウインドの風をながす処理が必要となります。

まずはスケールモデルでムービングベルト風洞開発テストをしっかりと行い、空力開発を終了してから実車風洞で最終確認をする。本気でエアロダイナミクスを追求するのならば、しっかりと手順を踏むことが重要です。さらにフード後半部分のフェンダーとのパーティングの隙間から、ヒンジなどの中の臓物がもろに見えるのは販売価格を考えるとあり得ないとも思います。

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◆カムリは効率化を進めたユニット搭載

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インサイトのエンジンルームを見ると、ホンダもストラットアッパーをダッシュパネルと直接つなげる構造を取るようになってきました。樹脂パネルでカバーをしていますが、がっちりとしたスチールの板をダッシュパネルに這わせて左右のストラットアッパーを繋げています。エンジンフードは、カムリはガスダンパーを使っているのに対してインサイトはポーツを使っています。このクルマの価格からはガスダンパーくらいは欲しいところですね。

エアインテークはエンジンルーム前端に上向きに配慮しています。ボンネットフードの隙間からフレッシュエアを取り入れて、フード裏側のエアダクトを介して吸気するレイアウトになっています。これはこれで面白いアイデアですが、よくよく空気の流れを考えると、このインテークダクトはちょうどラジエターの上に位置しています。ある程度の速度で走行している時はいいのですが、渋滞でとまっていたり、速度の低い時は下からの熱で吸気が暖められてしまいます。

パワーユニットのレイアウトを見ても、システム化されて汎用性を高めているカムリのハイブリッドと比べてインサイトは無駄なコストがかかっているように見えます。カムリのハイブリッドシステムは安く、共用化で効率よく作っています。これは安っぽいという意味ではなく、無駄なコストを抑えて、汎用性を高めた合理的で量産効果のあるパワーユニットの構造、レイアウトだという意味です。それに対してインサイトはまだ発展途上と言えます。このパワーユニットをそのまま、どのクルマにもぽんと搭載することはできないと思います。機能を高めながら原価低減はまだまだ可能ということでしょう。

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◆新型カムリとインサイトのインテリア

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インサイトの室内を見てみるととてもこの販売価格のクルマには見えないです。インパネはプラスチック感が出ており、シボもあいまいで安っぽい感じです。質感を感じさせるものがありません。一方助手席は革を使っており、差別化を図っています。

インパネの段差の付け方など、造形検討の段階では、艶もなく光を反射せず吸収するクレイ粘土を使って見ているために立体感があっていいと感じる形状なのでしょう。しかし実際の樹脂素材になった時、今度はその立体造形がガチャガチャして見えるのです。仕上げ後の素材感やカラーのイメージが出てきていないのです。インパネ全体が艶消しブラックなのに、センターのモニター画面はテカテカ反射するような表面処理で、ここだけ浮いて見えるのです。一体感が感じられません。

インパネはブラックを基調としていますが、黒の色調が7色あり、またく統一感がありません。形状によって反射の仕方が違うのですから、微妙に色調を変更して、視覚的には同じように見えるようにするのが”プロの仕事”なのです。クレイ粘土のモデルから、実際の生産用材料に替えた実車時のそれぞれの黒色の見栄え変化がわかっていません。まずは基本の基本をしっかりと押えて、それから様々なアレンジにトライしてみるのです。

シートは可もなく不可もなくというところです。このシート形状は実際に座るとサポートが効きません。とまった状態で座ってみると、サイドサポートが身体を支えているように感じますが、実際に走ってGがかかると身体を支えきれません。もっと腰の部分を包み込むようにした形状でないと、動くクルマでドライバーの身体を支えることはできません。後席はフロアと座面の高さ感は標準的で腿が大きく浮くことはなく、標準的と思われます。

トランクリッドを開けると、インサイトは自重で勝手に閉まっていきます。これはだめでしょう。カムリのトランクはロックを解除するとトーションバーの反力でスッと開いていきます。これが一般的な設計なのです。ところがインサイトは開かないばかりか、開度半分より下方では閉まってしまうのです。雨が降る中、半分開きで荷物の出し入れをしたいときなど、落ちてきたトランクリッドがアタマに当たりそうになります。

◆新型カムリとインサイトの室内空間

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カムリのインテリアは上手にまとめられています。ブラック基調の色調の合せ方もうまく、インサイトのようにガチャガチャした印象はありません。センターパネルのピアノブラックとその他の部分のつや消しブラックの2種類でまとめられています。

シートはいい感じです。背もたれ中央部が体重でスッと沈み込んで包み込むようなフィット感が得られています。インサイトのシートはフラットなまま均一に沈み込むためサイドサポートの張り出し頼みになっているのですが、カムリのシートは背もたれ全体で身体を支えるシートになっています。これは実際に走り込んで作り上げたシートと思われます。それに対してインサイトはメーカーが持ってきたものを車載しただけで走ってもいない、使い込んでもいないと感じられるのです。カムリの後席はやや広く、当たり前ですが、アメリカ人が乗ってもゆったり乗れるサイズになっています。

・インサイト

雨の日にワイパーを作動させますが、アームが視界のあらゆる位置に入ってきてかなりうっとうしい感じがします。助手席側のアームがくの字型になっていますが、この折れ曲がりポイントがちょうどフロントウインドウのど真ん中に来るのです。視界にびったりと入ってきます。

加速をするとぐぉーっという低周波の音がきになります。50km/h前後で特に音が出るのです。これはパワートレインの共振音で、エアコン吹き出し口から室内に入り込んできます。同時に音だけではなくペダルに微振動も出ています。速度をもう少し上げるとスッと音が消えます。ただ、速度を上げていった時のエンジン音はかなり耳につきます。駆動力はモーターですが、モーターを回すためにエンジンがグンと回転を高めて発電力を上げます。この音があまり気持ちいいものではないのです。

足はしなやかでいいと思います。ゲインは穏やかで、けっしてスポーティではないのですが、ファミリーカーとしてはちょうどいいと思います。ちょっとクルマの重さに持って行かれる感じもありますが、もう少しだけ固くしてもいいのかもしれません。ただ、路面の微細な段差を乗り越えた時のしなやかな動きはいいです。とても滑らかな乗り心地といえます。シックアブソーバーの微少入力域の動きがとてもスムーズで、ただ、減衰の反力を緩めてるため、重量に対して若干抑えが効いていない部分もあったりします。このクルマの狙いは、ファミリーセダンとしてのコンセプトを考えれば、この足回りのチューニングで正解と言えるでしょう。

ロードノイズは抑えられていて上質です。それだけにパワートレインの音と振動が気になり残念です。操舵に対するする前後のバランスはいいですが、ブレーキは前輪への配分がちょっと強く、ノーズダイブが大きいです。もう少し後輪ブレーキを使ってもらいたいです。ブレーキの剛性感は高く、コントロール性もばっちりです。

・カムリ

カムリのパワーユニットはとても熟成が進んでいると思われます。走りだしや、低中速での巡航からぐいとアクセルを踏み込んだ時のモーターアシストによるトルクレスポンスがものすごくシャープで力強いのです。50km/h前後で走っても共振による振動や音は感じません。ただ、回転が上がった時のエンジン吸気音はトヨタハイブリッドモデル全車共通です。

操舵に対する車体の反応はインサイトと比べれば明かに敏感です。ほどよいスポーティドライブ感覚を味わうことができます。ノーマルカムリとレクサスESの中間位置な印象です。この乗り味はレクサスにはない感じですね。

モーターによるトルクレスポンスの押し出し感と操舵に対する車体の反応のレスポンスがマッチしており気持ちいいのです。操舵に対する前後の動きのバランスもよく、変にフロントが突っ張るようなこともなく、リアがスッと追従します。これは公道をしっかりと走りコンで作り込んでいます。フロントを固めてグイグイ動かす最近のFF系BMWのハンドリングなどなどよりもいいと思います。ボディ剛性とサスペンションチューニングのバランスが絶妙で、これ以上硬くするとレクサスESのようにボディが負けてしまうでしょう。ロードノイズはちょっと感じますが、これはすべてボディ後半から入ってくる物です。このプラットフォームはBピラー後のフロア剛性がちょっと不足しているのですが、カムリWS程度の足の硬さであればカバーされてESのような不満な感じないでしょう。上手にチューニングされています。

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