2019年に開催されたロサンゼルスモーターショーで発表されたマツダ3ですが、ついにスカイアクティブ-Xを搭載したモデルが登場します。マイルドハイブリッドを搭載した新たなパワートレインが更なる低燃費を達成するといわれている中、さらに燃費だけではなく、走行性能やエクステリアのデザインの秀逸さ、インテリアの質感の向上など、現行型からさらに改良されているといいます。
こちらの記事に書かれている内容は・・・
◆マツダ3の秀逸さ

マツダ3は2018年11月に開催されたロサンゼルスモーターショーで世界初公開されました。マツダ3というとマツダの世界販売台数の3分の1を占めるモデルで、北米の販売では約50%を占めるほどです。それだけ北米で売られているモデルということもあり、初公開された時にマツダ3は大きな話題となりました。メディア向けの試乗会も行われ、その性能の高さはかなり評価されたほどです。日本名ではアクセラで販売されていたマツダ3ですが、2003年にデビューして以来、世界での累計販売台数は600万台を超えるマツダの世界戦略車でもあります。
マツダ3のスカイアクティブ-Xエンジンの搭載車には「Mハイブリッド」と呼ばれる24Vのマイルドハイブリッドシステムが採用されています。このMハイブリッドの出力は4.8kw/60.8Nmとそれほど驚くような性能ではありません。Mハイブリッドを搭載している理由は以外なところにあるようです。マツダ3のスカイアクティブ-Xの搭載車いは、世界初の「火花点火制御圧縮着火」を実現した高効率のガソリンエンジンを積んでいることだけが特徴ではありません。マツダが独自に開発したハイブリッドシステムを搭載しているのも特徴です。その名の通り、Mハイブリッド(マイルドハイブリッド?)のモーターの出力は小さく、バッテリー容量も小さいのです。
モーターはストロングハイブリッドの多くがそうするような、トランスミッションに内蔵する方式ではありません。オルタネーターやスターター機能とアシスト、エネルギー改正を兼用するタイプとなり、マツダはベルトドリブン・インテグレーテッド・スターター・ジェネレーションと呼んでいます。12Vではなく24Vで駆動し、最高出力は4.8kw、最大トルクは60.8NMとなります。減速時に回生したエネルギーは、助手席側のフロアに搭載しているリチウムイオンバッテリーに蓄えます。容量は、0.216khwで、重量は9.5㎏。24Vの電圧を車載電装品の駆動電圧である12Vに変換するDC-Dコンバーターも、Mハイブリッド搭載にあたり追加になったコンポーネントなのです。
・スカイアクティブ-X スペック
エンジン形式:2.0L直列4気筒DOHCスーパーチャージャー+マイルドハイブリッド
エンジン型式:HF-VPH型
排気量:1997cc
ボアxストローク:83.5×91.2
圧縮比:15.0
最高出力:180ps/6000rpm
最大トルク:224Nm/3000rpm
使用燃料:プレミアム
Mハイブリッド搭載の狙いはパワーアシストではなく、あくまで燃費での向上が狙いとなります。エンジンの高回転領域で燃焼効率をより高いところに持っていく使い方をしており、モーターの仕事分だけエンジンを休ませる考え方となります。スカイアクティブ-Xは広い領域で高い燃焼効率を誇りますが、内燃機関である以上は相対的に効率の悪い領域は存在してしまいます。そこはモーターでカバーしてエンジンの効率を助ける考え方です。モーターはエンジンの手の届かない隙間を穴埋めするために存在しているといいます。
ベースとするエンジンの効率が悪い場合、サポートしなければならないモーターの負担は大きくなり、大きな出力が必要となります。ですが、スカイアクティブ-Xは効率が高い領域が広いので、サポート役の負担が小さくて済むのです。そのため最高出力5.1kwの小さなモーターで十分ということなのです。これはシステム全体の軽量化にもつながります。モーターを賢く使っているのがMハイブリッドの特徴で、回生側のエネルギーをいかに刈り取るか、そこに着目して開発されました。
CX-5などが搭載しているi-ELOOPは、減速時の運動エネルギーをオルタネーターで回し、キャパシタに蓄えるシステムです。減速エネルギーの回生に特化したシステムとなっており、駆動時のアシストは行いません。アクセルオンの時にはオルタネーターによる発電を休止し、キャパシタからDC-Dコンバーターを経由して電装品に電気を供給します。エンジンの負担を軽減して燃費向上に結び付ける考え方です。Mハイブリッドはその発展したかたちとしてとらえることもできるでしょう。
i-ELLOPと今回のスカイアクティブ-Xに搭載されているシステムの違いについては、ブレーキの仕事を電気に置き換えているところにあります。アクセルオフでエネルギーを刈り取るというよりは、ブレーキを踏んだ時に発電で減速Gをだし、そのぶんブレーキに仕事をさせるようになります。油圧ブレーキと回生ブレーキの配分を制御する強調回生ブレーキを採用しているのもMハイブリッドの技術上の明るい話題といえます。そのため負圧ブースターを電動ブースターに置き換えています。
回生能力を強化しただけではなく、Mハイブリッドでは有車速ストップという機能を盛り込んでいます。これは一定の車速まで減速すると、車両が完全停止する前にエンジンが停止し、モーターの能力を最大限使い切ってエネルギーを刈り取りつつ停止します。信号の変わるタイミングなどである、止まろうとしたけど信号が青に変わったのでまたアクセルペダルを踏み始めたというのに似ているでしょうか。
Mハイブリッドはそのようなシーンも想定していて、アクセルペダルを踏み込んだ瞬間にエンジンは始動します。エンジンが停止した状態ではなくても再始動できるのがベルト方式の利点でしょう。
スターター方式の場合は一般的に、条件を満たさないと再始動できないことがあります。一方でベルト方式のMハイブリッドは、走行シーンが変わった際に速やかに、かつ静かに始動できます。さらに振動も抑えるのです。新型マツダ3でベルト方式を採用した狙いの一つは、今まで振動の大きさや発進性を気にしてアイドリングストップシステムのキャンセルスイッチを押していた人には積極的に利用してもらいたいシステムになります。燃費や静粛性を引き上げて、スカイアクティブ-X搭載車の付加価値を高めることがMハイブリッドの狙いでもあります。ぜひ市街地でその真価を確かめてもらいたいところです。